ゴルフ会員権業界を取り巻く環境

ゴルフ会員権 購入需要指数の2極化

20113月期】

 

 

ゴルフ業界を取り巻く環境は、様々な2極化が進んでいると再三、このレポートでお伝えしてまいりました。特に昨年末から3月にかけて目立つのは、会員権の購入銘柄の2極化です。

買い需要の多いコースと売り気配一色のコースがより顕著になってきております。

 

今月のテーマは、景気低迷が続き、不要不急と云われるゴルフ会員権の中で進行しつつある購入需要の2極化についての検証です。

 

ゴルフ会員権の購入売却バランスを見る1つのバロメーターとして、会員数約14,500名以上が在籍する共通会員権である太平洋クラブがあります。今回はこの太平洋クラブの購入・売却件数を指標に指数を算出して分析していきます。平成23310日現在、当該会員権は売却件数5、購入件数5でしたので、購入件数(5件)÷売却件数(5件)×100100を基準指数とします。

 

よって、

指数100以上は会員権市場において購入需要が高い会員権銘柄であり、

指数0は購入需要が全くない会員権銘柄となります。

 

 

【1.17県の平均購入需要の指数】

 

東京・神奈川・埼玉・千葉・茨城・栃木・群馬・山梨の市場流通する会員権は、411銘柄あり、

1都7県の平均指数は93.6となりました(平成23310日現在)。

やはり、関東圏のゴルフ会員権は、購入需要よりも売却需要のほうが上回っていました。

購入需要指数が高いのは、やはり東京・神奈川・埼玉・千葉であり、特に東京と神奈川は平均指数が100を越えております。

ゴルフ会員権の購入度合いは、首都圏近郊の13県に集中していますので、更にこの地域に絞って検証を進めてまいります。


【2.購入需要指数の分布状況(1都3県)】

 

購入件数が、売却件数を下回る指数100未満の銘柄は、1都3県184コースの約3分の2にあたる121コースが該当します。裏返せば、首都圏のゴルフ会員権の中でも約3分の1のコースに購入需要が集中しつつある事が浮き彫りされます。

 

各都県の購入需要の高い指数銘柄の上位は下記になります。

(購入需要指数300以上は緑色掛け)


 

 


【3.購入需要指数ゼロ銘柄の格付評価分布(1都3県:全184コース対象)】

 

 

買い需要がまったくない指数0のコースは、全体の約25%にあたる45コースが該当します。

指数0のコースを格付評価別に表したものが上記グラフです。

格付CDが多いのは推察できましたが、注目すべきは、格付ABの優良銘柄コースの中で、買い需要が現在の市場でなくなっているコースが出始めているという事実です。

(よみうりGC・日本CC・東松山CC


【4.購入需要指数100以上銘柄の格付評価分布(1都3県:全184コース対象)】

 

 

指数100以上のコースは、格付評価ランク別に満遍なく存在し、34%にあたる63銘柄が該当

します。特に格付評価Bが突出している背景は、格付Aの会員権購入には予算不足でも、より安心さとコースコンディションの良いコースを求めるので、当然、格付B銘柄に需要が高まります。

指数0分布とは反対に指数100以上分布では、格付Dで購入指数の高いコースが目を引きます。(葉山国際CC・木更津GC・京CC


【5.格付評価ランク別の2極化】

購入需要指数は、格付評価ランク別での2極化を物語ります。

決められた予算範囲で今まで以上に選別して会員権を購入する意識が高まっている証拠と云えます。

特に購入指数の他、購入件数や売却件数が際立って多いコースの2極化についてご報告致します。

 

格付評価での2極化

★高指数銘柄と検証★

小金井CC (指数266・東京)

都心からの近さは群を抜いていますが、日本で一番高い相場を形成しつつも、高額所得層中心にステータス需要も含め、購入需要が年間を通じて高い銘柄です。

 

東京よみうりCC(指数233・東京)

男子プロツアー最終戦の舞台でもあり、個人・法人から高い人気を集めるコースです。予約が取り難い欠点がありますが、場所・経営母体・コースレイアウトの三拍子が揃ったコースのため、年間を通じて購入需要が高い銘柄です。

 

戸塚CC (指数466・神奈川)

神奈川県の入会相場として一番の高価格銘柄です。男子プロトーナメントの舞台にもなりますが、クラブハウスの風格、コース管理、厳格な運営姿勢の評価は高く、メンバーになることにステータスを求める方も多い銘柄です。

 

武蔵CC(指数250・埼玉)

戸塚CC同様、埼玉でステータスNO1の銘柄です。

 

キングフィールズGC(指数333・千葉)

民事再生後、母体が磯子CC運営する千代田グループに変わり、もともと良いコースであったポテンシャルに加え、母体の信用度が相乗効果を生み出しました。珍しく食事(中華料理)も大好評で法人需要の高い銘柄です。

 

▼低指数銘柄と検証▼

よみうりGC(指数0・東京)

現在に限らず、購入希望がこの1年間ほとんど無い状況です。小金井CCと異なり、個人需要でなく、法人会員専用かつ上場企業に準ずる会社のみの入会条件ですので、現況下で法人が高額予算を投入できない事情が指数に反映しています。当コースを購入するなら、他の優良コースを複数口購入する動きが多く見受けられます。

 

藤ヶ谷CC (指数14・千葉)

千葉県の中でも本コースは屈指の名門コースですが、都心から近いとはいえ、場

所が常盤道と東関道の間に位置し、アクセス面でマイナスになっている銘柄です。需要が地元近隣限定になりつつあります。法人接待用に考えた場合、高速道から遠いという観点から購入候補から外れるケースが多い状況です。


格付評価での2極化

★高指数銘柄と検証★

府中CC(指数700・東京)

奇数月の月末が入会審査書類提出の締め切りとなります。丁度3月がその時期に当り、そのため真剣に購入する方が増し、買い指数が通常月より上昇します。東京都の個人向け会員権として小金井CC、東京よみうりCCに次ぐステータス感のあるコースとして根強い人気がある銘柄です。

 

平塚富士見CC(指数550・神奈川)

特別清算の弁済が確定し、神奈川県の中で一番の人気コース銘柄になりました。

相場も下がった反動で安いと感じた購入需要が増加しています。

法人会員の記名人がリタイア後、個人で会員になる率が極めて高いコースです。

 

清川CC(指数180・神奈川)

法的整理後のメンバー重視の運営が常に評価されている銘柄です。

 

袖ヶ浦CC(指数700・千葉)

千葉県の中で一番の人気コースと言えます。

相場も下がった反動で安いと感じた購入需要が増加しています。

法人会員のメンバー会社は、市場売却するケースが極めて少ない銘柄です。

 

鳩山CC(指数450・埼玉)

埼玉県東武線沿線のコースの中では、法的整理後、古い体質に囚われない新しいメンバー層を取り込むことに成功しました。コースもチャンピオンコースでメンテナンス管理にも力を入れており、その姿勢を前面に出して努力している姿が購入需要指数に反映している銘柄です。

 

▼低指数銘柄と検証▼

八王子CC(指数14・東京)

特に悪い評判は無く、運営も堅実ですが、名義書換料210万、預託金300万と相場200万で約700万円以上の高額入会相場となります。この予算がある方は、圏央道が開通してから、埼玉地区の優良コースや府中CCへ流れてしまうポジションの銘柄です。

 

高坂CC(指数37・埼玉)

来場ゴルファーやネット情報等で、キャディの対応が悪いとの評判が多い状況

です。経営母体は安心なのですが、ソフト面での新たな営業努力をしないと価値を維持できない銘柄になっています。法人⇒法人の譲渡制限も市場流通を妨げています。

 

日本CC(指数0・埼玉)

メンバーの高齢化が進む中で、近隣の鳩山CCと比べてもメンバーの若返りに対する対策がみられず、古い体質が浮き彫りです。法人⇒法人などの市場譲渡制限が市場流通に悪影響を及ぼしている銘柄です。

 

東松山CC(指数0・埼玉)

以前は名門コースの部類に入りましたが、書換料210万、預託金100万の入会コストが高すぎて、売り気配一色で買いが入らない状況が何ヶ月も続いている銘柄です。相場のつかないコースに書換料の210万の捨て金は敬遠されても仕方ない状況です。書換料・預託金を下げ、流通性を高めないと高齢化で手放したい方も手段が失われつつある銘柄です。

 

格付評価Cでの2極化

★高指数銘柄と検証★

平川CC(指数233・千葉)

民事再生後、書換料を150万⇒100万に下げ、また近年女性入会の枠の制限を

撤廃しました。もともとコースの良さは好評でしたが、現在の価格帯(トータル300万以内)が需要に拍車をかけた銘柄です。再生後の母体が、上場企業になったことも評価が高まる要因になっています。

 

鴻巣CC(指数250・埼玉)

JR高崎線沿線のこのエリアで会員権購入を検討する場合、河川敷コースが大半のため、自然と当コースを購入する需要が高くなっています。

 

▼低指数銘柄と検証▼

武蔵野GC(指数28・東京)

都心から近いコースですが、インターネットでも予約が取れるため、あえて会員になろうとする需要が少ない銘柄です。

 

高根CC(指数0・埼玉)

当コースは、都心から少し遠いイメージのコースになっています。ネット予約が可能となってから、メンバーシップコースとしての価値を下げてしまった銘柄です。書換料100万、預託金100万の入会コストに対して入会意欲が追いついていない状況です。

 

大栄CC(指数11・千葉)

入会審査が、年4回(2,5,8,11月)のため、入会機会が少なく、特に3月は購入需要がなくなります。また相場の割には、入会条件や手続が厳しいため、敬遠されがちな銘柄です。入会が厳格にもかかわらず、ネット予約が可能なのも需要を減少させている理由の一つです。

 

鎌ヶ谷CC(指数0・千葉)

藤ヶ谷CCと同じく都心から近いのですが、地元近隣の需要しかない傾向が強まっています。ネット予約できるのもこの近さではマイナス要因です。

メンバー数の多さも需給バランスを崩している銘柄です。


格付評価Dでの2極化

★高指数銘柄と検証★

葉山国際CC(指数400・神奈川)

書換料73.5万 預託金300万と入会コストは重く、今まで購入需要がゼロに近い銘柄でした。平成21年に45歳以下の入会者には、入会預託金の分割預託制度(120回分割)を導入し一時的な資金負担をさせないことが入会し易く流通性を高めた銘柄です。

 

木更津GC(指数500・千葉)

アクアラインの利便性が最も高い環境と価格帯で需要を高めた銘柄です。

 

CC(指数400・千葉)

PGMグループは名義書換料を、購入する会員権の預託金から充当できる制度を実施し、本コースは充当プランを実施すれば、書換料から最大20万円差引いた価格で書換可能となり、相場と合わせて50万円前後で入会可能なコースになっています。安さがインパクトになった銘柄です。

▼低指数銘柄▼

多数


【5.総論 】

今回の購入需要指数を検証して再度確信したことは、メンバーシップゴルフ場においてゴルファーから支持される大切な6つのポイントです。

 

@     経営母体の安心度

A     コースレイアウトとコースコンディションの良さ

B     メンバー重視の経営姿勢

C     キャディさんの風評

D    相場と入会時の名義書換料金・入会預託金のバランス

E    相場と入会条件・入会資格のバランス

 

@・A・B・Cは、以前と変わりませんが、D・Eのように相場と比べて名門コース並に入会条件が厳しいコースや相場に比べて名義書換料や入会預託金の負担が大きいコースを敬遠する傾向が強まっています。

 

そして今回の調査では、13県(184コース)の中で購入需要指数が100以上なのは、約34%の銘柄への集中でしたが、指数150以上は24%の銘柄、指数200以上は16%の銘柄に集中していることが判明しました。

以前にパレードの法則(8020の法則)や7822の法則に触れた際に『極端な話、近い将来、「ゴルフ会員権市場は、資産価値を有する20%の会員権に対し、資産価値を喪失する80%の会員権」という図式が成り立ってしまう可能性があります』と申し上げました。

 

現在の購入需要指数は、まさに、この法則に合わせるかのように静かに進んでいると示唆しています。購入需要指数においても、購入需要の8割が、全コースの2割に集中しつつある、ということです。

 

今後益々、メンバーとゲストとビジターのサービスバランスや差別化を考えて、当たり前のことを当たり前に凡事徹底するゴルフ場こそが、健全なメンバーシップ銘柄であり、資産価値のある会員権銘柄として支持されるのに拍車がかかることでしょう。

以 上

 

AIゴルフ総研事務局:川島利彦、柳肇、品川なつみ)