ゴルフ会員権業界を取り巻く環境

〜 2011年9月 ゴルフ会員権 トレンド 〜

20119月期】

 

 

東日本大震災から約6ヶ月が経過いたしました。

震災直後の4月、5月の会員権市場は静まりかえっていましたが、株主総会後から少しずつ活気を取り戻しつつあります。法人の保有ゴルフ会員権の整理や見直しも再び増えて参りました。

 

今期、特に目立つ動きは、法人所有(個人名義)会員権を記名人ご本人が退任と同時に法人から譲り受けるパターンの増加です。よって、今回のレポートでは、このテーマについてメリットや注意事項についてご報告させて頂きます。

 

 

【傾向】

法人所有(個人名義)の会員権は、法人向け会員権という概念が存在していない時代の歴史ある名門コースや法人所有(法人名義)会員権にするには、複数口の所有が必要とするコースに多く見受けられます。法人から記名人が譲り受ける会員権には共通の特徴があります。

 

1.         個人で新規に入会しようとした場合、入会諸条件が極めて大変なコース。

(推薦者手配・理事推薦・面接プレー・他クラブ在籍条件 等)

ゆえに、法人内記名者変更手続が面倒で障害が生じるコース。

2.         法人所有(個人名義)を記名人変更する際に、高額の名義書換料負担が生じるコース。

3.         次の記名人予定の方が、当該会員権の記名を望まないコース。

(ゴルフ場が新記名人宅から遠方に所在、ゴルフを積極的にはしていない 等)

4.         基本的に所有ゴルフ会員権を整理する方針になっている法人。

 

このような条件が重なった場合に、記名人が法人所有(記名人/個人名義)会員権を記名人が購入して、記名人/個人所有(記名人/個人名義)の会員権にするケースが増えています。

 

 

【現記名人が法人から譲り受ける記名人メリット】

 

1.         名義書換料が生じなくなるため、通常の会員権購入資金より減額できます。

(概算平均100300万円の減)

2.         面倒な入会手続を省略することができます。

(但し、郵便物や年会費の請求先住所の変更を申し出る必要あり)

3.         記名人時代によく利用していた方は、ゴルフライフのリズムを守れます。

 


 

【現記名人に譲渡することでの法人メリット】

 

1.         担当秘書室や総務部の方が、新しい記名人の面倒な入会手続きの準備や根回しに翻弄されないで済みます。

2.         高額な名義書換料などの新たなコスト負担をしないで済みます。

3.         次の記名者用として、売却資金を元に利便性が高く(記名者変更書換料がリーズナブルかつ入会諸条件が簡単)管理しやすい会員権に切り替えることができます。

 

【法人⇒記名人売買取引についての注意点】

 

法人⇔記名人での直接取引きも可能ですが、監査法人や税務署からの役員賞与、利益相反等の指摘予測がされるリスクからの回避が必要です。

よって、信用のおける会員権業者を仲介経由する取引(法人⇒会員権業者⇒記名人)が理想です。法人はあくまでも、『市場で会員権業者に売却した』、ということで取引を終了させることにより、社内外への誤解や税務上リスクを回避できるスキームが成り立ちます。

 

【法人所有記名人名義⇒記名人所有記名人名義が多い銘柄&入会条件】

 

下記コースが特に記名人ご本人が、在籍法人から購入される会員権で多いコースの一覧です。


 

前ページ表の買換料(赤字・黄色掛け)の負担を無くして入会できます。

また、主だった各コースの入会諸条件は、以下の通りとなり、この面倒な諸手続を省略して、

引き続き、スムーズな個人所有権かつ個人名義のメンバーとなります。

 

 小金井CC

      推薦者 :在籍3年以上(平均月1回以上来場)の会員2

           推薦者同伴面接あり

2名の推薦会員は事前審査委員会に出席できる方。

推薦者は、1会員につき年間推薦は2人まで。

 府中CC

      推薦者 :在籍5年以上の会員1名。

           推薦者同伴面接あり

           推薦文あり。

      他クラブ:JGA加盟コース在籍2年以上

 袖ヶ浦CC

      推薦者 :2名。理事推薦必要

 鷹之台CC

      推薦者 :在籍5年以上の会員2

 千葉CC

      推薦者 :在籍5年以上の会員1名。(5年未満の場合は2名)

           推薦文あり。

 相模原GC

      推薦者 :在籍5年以上の会員2

           推薦者同伴面接&推薦文あり。

      他クラブ:他クラブ2年以上在籍&HDCP証明必要。

 戸塚CC  

      推薦者 :在籍5年以上会員3名+理事推薦必要

      他クラブ:他クラブ2年以上在籍&HDCP証明必要。

 平塚富士見CC

      推薦者 :会員2名。

      他クラブ:他クラブ在籍必要。

 本厚木CC

       推薦者:在籍5年以上会員1名。

           推薦者同伴面接あり。

 スリーハンドレッド

      推薦者 :会員1名。

      その他 :上場企業の会長、社長クラスの方のみ


 

大洗GC

     推薦者 :在籍10年以上2

龍ヶ崎CC

      推薦者 :在籍5年以上2

      他クラブ:他クラブ在籍必要。

 

 

 

       

【 20119月レポートまとめ 】

 

最後に、ゴルフ場における“善”と“義”についてコメントいたします。

仏教用語で以下の言葉があるそうです。

 

小善は大悪に似たり

大善は非情に似たり

 

例え話「ご老人と渡り鳥」

ある優しいおじいさんの自宅の庭に毎年冬に立ち寄る渡り鳥がいました。

ある冬、大寒波で旅立つことが出来なかった渡り鳥を可哀想に思い、毎日餌をあげるようになりました。そして餌付けされた渡り鳥は、旅立つ季節になっても移動しなくなりました。

何年かの月日が経ちました。やがておじいさんが亡くなり、渡りに餌をやる人がいなくなりました。渡り鳥たちは自分で餌を探すことができず、皆、飢死してしまいました。

ここでおじいさんが、渡り鳥にえさを与えることを「小善」

この顛末を予測して与えないことを「大善」と言い喩えています。

 

 

この言葉を今のゴルフ業界に当てはめてみましょう。

 

ゴルフ場が行うビジターに対しての“小善”は、ゴルフ場のメンバーにならなくても土日祝日にインターネット予約を通じてプレーを可能にしていること。

ゴルフ場にとっての“小善”も、厳しい環境を打破するために、土日祝日にインターネット予約を通じてビジタープレーを可能にして売上UPをはかること。

しかしこれは、会員にとっては“大悪”な結果をもたらしていることが多々あります。

会員の権利が侵害されることであり、会員メリットの減少であり、会員権相場(資産)の通常以上の下落を招きます。


 

反対にゴルフ場が行うビジターに対しての“非情”は、土日祝日のビジターのみのインターネット予約の門戸を閉じていることでしょう。

しかし、会員にとっては“大善”に繋がっています。何故ならば、会員の権利と資産をゴルフ場が守っているからです。会員に対しての“大義を貫いていると云えます。

 

もちろん、会員のプレー権の確保という名目を大きく掲げ、民事再生法と云う法的整理によって、ゴルフ場の義務を放棄し、メンバーの預託金債務を90数%カットするコースは、論外です。

ゴルフ場側以外の誰にとっても小善にすらも値しない、“偽善(または不義)は極悪なり”、と云えるでしょう。

 

 

今後も益々、ゴルフ業界は厳しい局面が続くと推察されるからこそ、目先の損得ではない、ゴルフ場にとって、会員にとって、そしてゴルフ業界全体にとって、

本当の“大善”と何かを長期的観点、多面的観点、根本的観点から見直し見極めることが必要な時代に入ってきているのではないでしょうか。

 

 

以 上

 

                    AIゴルフ総研事務局:川島利彦、柳肇、品川なつみ)