ゴルフ会員権業界を取り巻く環境

〜 2012年会員権募集分析と次世代会員権の考察 〜

20129月期】

 

ゴルフ業界は、未曾有のデフレ経済が続く中、リーマンショックや東日本大震災のダメージを引きずりつつ、今度は、ゴルフブームを牽引してきた団塊の世代が65歳以上に達する2015年問題が間近に迫り、いよいよ最大の曲がり角にさしかかってまいります。

 

総務省が、今年の敬老の日に合わせてまとめた65歳以上の高齢者人口は、3,074万人(過去最高)で、総人口に占める割合が24.1%に達したと発表しました。

少子高齢化とともにゴルフ人口は、ピーク時の1,500万人が現在では1,000万人を割り出し、今後、ピーク時の50%まで減少され続けると推測されています。

まさにゴルフ業界は、今後の時代を見据えたゴルフ場経営の変革が求められているのです。

 

こんな環境下でも2012年には、多くのゴルフ場で新規募集や追加募集が実施されています。

今回は、現在のゴルフ会員権募集の分析と次世代ゴルフ会員権の考察についてレポートさせて頂きます。

(東京・神奈川・埼玉・千葉・茨城・栃木・群馬・山梨/17県84コース対象)

 

【 17県84コースの会員権募集状況 @募集平均金額 

 

下記は、都県別の会員権募集の平均価格のグラフです。

 

 

1784コースの平均募集価格は259万円となり、関東ゴルフ会員権平均相場の2倍以上の価格です。
2,000万円超の募集が3コースある千葉県が、503万円で最高平均募集価格地域となっています。

しかし、茨城県の平均募集価格は84万円、群馬県の平均募集価格は67万円と100万円台を割り込んでいます。


 

300万円以上の高額募集(全体の21%)も見受けられますが、総じて当然のごとく低額募集で攻勢をかけています。100万円以下の募集は、84コース中の57%(48コース)を占め、更に50万円以下の募集は、39%(33コース)を占めています。

特記すべき少額募集を開始したのは、健全経営で預託金を返還してきている実績のある大和ハウスグループのアローエースGCが、30万円募集(預託金:20万円・入会金:10万円)に踏み切ったことです。

 

 

尚、300万円以上の高額募集コースは下記の18コースです。

300万円以上の募集コース】

 

 

500万円以上の高額募集コース】

 


 

1,000万円以上の高額募集コース】

 

 

 

【 17県84コースの会員権募集状況 A募集形態 

 

過去から大きく変化したことは将来的に返還義務が伴う預託金制から、プレー権主体の返金義務の生じない入会金制への募集に変遷してきていることです。募集コースの半数が入会金制募集です。

 

 

預託金制 募集数

入会金制 募集数

総数

東京

2

0

2

神奈川

3

1

4

埼玉

2

3

5

千葉

20

8

28

茨城

5

11

16

栃木

5

8

13

群馬

3

7

10

山梨

2

4

6

 

42

42

84


 

13県は、39コースのうち12コース(30%)が入会金制募集ですが、他4県においては、45コースのうちの30コース(66%)が入会金制募集に傾倒しつつあり、13県以外の地域は預託金制ではなく、入会金制が主流になりつつあります。

 

また、50万円以下募集の33コースのうちの75%にあたる25コースが預託金のない入会金制募集で新規会員を集めています。

 

 

【 預託金制募集の内訳 

 

預託金制から入会金制への変遷とともに、預託金制においても、募集金額内訳に大きな変化が生じています。

預託金制絶頂(昭和55年〜平成3年)の募集形態は、募集総額に対して入会金が占める割合は20%以下でした。

 

しかしながら、下記の表の通り、入会金の占める割合が大幅にUPしています。

特に、13県以外の4県(茨城県、栃木県、群馬県、山梨県)の入会金パーセンテージが50%超と高く、相場動向に影響される預託金償還問題からのリスクヘッジを講じているとも云えます。

 

 

預託金募集平均

預託金 平均

入会金 平均

入会金 割合

東京

478

310

168

35%

神奈川

355

126

107

30%

埼玉

581

402

179

31%

千葉

667

503

165

25%

茨城

121

63

63

52%

栃木

115

63

65

57%

群馬

33

10

25

76%

山梨

210

53

158

75%

平均

合計

210

191

116

55%


 

しかし現在は、会員になる価値がないと判断されるコースは、相場価格がつかない銘柄も多くあります    ので、預託金金額が低額と云えども、預託金償還問題から完全に回避できる訳ではありません。

 

預託金証券額面以上の相場流通が維持できて初めて、償還問題から回避可能となるのです。

よって、会員サービスの充実やメンバーとビジターとの差別化は今まで以上に必要となります。

 

また入会金制を導入するゴルフ場は、相場下落による問題は無くなりますが、かといって相場がどんなに低くなっても構わないという理由等で、メンバーを無視した売上至上主義によるビジター優先等の姿勢は、許されることではありません。会員の資産である会員権価値を高める努力は、入会金制のゴルフ場も同じことにはなんら変わりがありません。

       

 

 次世代ゴルフ会員権のあり方 

 

今回、1784コースの募集資料を取寄せ分析しましたが、現在募集のほとんどのコースが、残念ながら旧態依然の11名記名式会員権でした。

このような会員権は、もうゴルファーにとって募集金額が安くても、特に魅力ある会員権と映りません。

少子高齢化に向けた新しい会員権は、まだ生まれてきていないと判明されました。

 

法的整理をしたゴルフ場の中には、法人無記名式会員権や記名人+1名無記名式会員権、等、ゴルファーニーズを取り入れた特殊会員権も出始めましたことは喜ばしい事です。

 

しかし、AIG総研が考える理想とする次世代会員権を開始するゴルフ場の条件は、

@ 経営財務が健全であること、

A コース戦略性に富み、メンテナンスが行き届いていること、

B 法的整理をしていないこと(会員に大きな損害を与えていない)、

を兼ね備えたコースです。

このようなゴルフ場こそ、新次世代ゴルフ会員権を世に打ち出すことで、ゴルフ業界に一石を投じ、業界活性化の一つの要因になると推察します。

 

では、魅力ある会員権とは、何でしょうか。

 

今までゴルフ場が敬遠してきたサービスを盛り込むことがその一つです。

あくまでもゴルファー視点からの会員サービス重視をどこまで追求できるかです。


 

例えば、個人ニーズを活かし、夫婦会員・家族会員・カップル会員制度(12名記名)でツーサム保証、割増料金なし。インターネット予約でビジターのツーサム保証をされているコースはありますが、会員の特典としてのツーサム保証制度はまだありません。そし会員向けカップル大会等を開催し、家族やカップルでのエンジョイゴルフライフを推奨いくことです。

 

もう一つの個人ニーズとして、個人11名記名でも、同伴者が1万円以内のメンバー料金同レベルで

プレーできる会員権。プレー料金が高いため、なかなか友人を誘いづらいという理由からスリーピング会員になってゆく会員にも歯止めをかけられます。優待チケットではなく、制度に盛り込むのです。

 

会社の方針や営業的にゴルフを推奨している会社向けには、法人福利厚生的な14名無記名会員権

4名無記名=4名メンバー料金で1万円以内のプレーであれば、ゴルフ好きの社員にも喜ばれ、来場率がグンと上がることでしょう。無記名であるので法人負担の法人内書換料もかかりませんし、複数口購入される企業も少なくないと存じます。

 

企業役員向けに魅力的なのは、14名役員記名式(4名の登録者誰もがメンバー)

登録する役員4名のどなたが来場してもメンバーとなる会員権です。極端に言えば、4口分保有と同等の内容を付加するのです。同一会員権の複数口所有の必要もなくなります。

人事異動に伴う法人内名義書換料負担も少なくなり、企業にも喜ばれます。

 

またゴルフ接待が盛んな法人役員向けに、

11名記名3名無記名式(メンバー同伴すれば3名もメンバー料金)

接待交際費用のプレー代金のコストも抑えられることは、企業にとっては大きいことです。

 

 

 

【 総 論 】

 

魅力ある次世代ゴルフ会員権の出現は、間違いなく今後ゴルファーから求められてくると推察します。

 

完全なるメンバーシップが確立している株主制コースや法的整理を経て会員制でありながらパブリック化しているゴルフ場以外の健全ゴルフ場が生き残るには、既成概念から脱却し、新たな会員制度を展開して、他コースとの大きな差別化を図ることが重要になってきます。

時代の変化とともに会員権を変化させていく必要が生じてきています。

個人会員の真のニーズ、法人会員の真のニーズを最大限に取り入れた魅力ある会員権です。


 

既存のゴルフ会員権は、魅力が失われています。

 

ゴルフの本来の魅力とは、

3世代が一緒に楽しむことが出来るスポーツであり、

広大な芝生を仲間と歩いてリフレッシュできる場であり、

レベルの異なる人がHDCPをつけて同じ土俵で競える競技であり、

数時間一緒にプレーをしながら激励し合える共有の場であり、

コミュニケーションが自然と育まれる社交場であり、

ゴルフマナー等も自然に身に付く礼儀作法の学びの場であり、

数時間で同伴する人柄がわかるという稀有な場、等ではないでしょうか。

 

もし原点に返ってゴルフの魅力を満載したゴルフ会員権が存在したらどうでしょうか。

たかがゴルフ、されどゴルフ、しかも魅力いっぱいのゴルフ。

 

魅力があれば、人は集まります。

ソフトサービスでは、『来る人には楽しみを、帰る人には喜びを』を追究し、会員権では、今までにない魅力溢れる会員サービスを創造することです。

 

それが、利用価値の高い会員権、会員価値のある会員権、資産価値のある会員権やリピート率の高い会員権を生み出していくことでしょう。

 

ゴルフ業界は危機が迫っている状況とは云われていますが、故ジョン・F・ケネディ大統領の言葉にもあるように“危機”とは、“危険(リスク)”と“機会(チャンス)”の2つが隠れているのです。

 

今、取り巻かれている環境をチャンスと捉え、今後、確実に迎える少子高齢化に向けた魅力ある会員権や会員サービスを創造し、ゴルフ業界に新しい風を吹き込むゴルフ場の登場が待ち望まれます。

 

 

 魅力とは、“ また である 』 

〜 また会いたい、また来たい、またプレーしたい、また連れてって 〜

 

 

 AIゴルフ総研事務局:川島利彦、柳肇、品川なつみ)