〜 ゴルフ会員権相場におけるアベノミクス効果の考察 〜 |
【2013年3月期】 周知の通り、東京市場では2013年3月8日の日経平均株価が1万2,283円62銭の高値を付け、4年半ぶりに2008年9月のリーマンショック直前水準を上回りました。 アベノミクス、円安、株高の影響は、年明けを境にゴルフ会員権業界にも波及しました。 関東ゴルフ会員権相場は、リーマンショック以後、東日本大震災の影響も受け、昨年2012年12月まで軟調し続け、相場平均101万円(1都11県503コース対象)という最安値に下落しました。 2013年3月レポートは、ようやく反転し始めた現相場(2013年2月)とリーマンショック後に最安値を更新した昨年12月相場との会員権相場比較の分析をテーマにしてお届けさせて頂きます。 【好転会員権相場(2013年2月)の考察】 @最安値(2012年12月会員権相場)と現相場(2013年2月会員権相場)との比較 2012年12月 関東平均相場 101万円 2013年 2月 関東平均相場 111万円(1都11県499コース対象) 会員権相場の高騰感があったにもかかわらず、関東平均全体での比較では、最安値からの騰落率は9%という微々たる上昇数値に留まりました。 Aリーマンショック前の相場(2008年8月)と現相場(2013年2月会員権相場)との比較 2008年8月 関東平均相場 176万円 (1都11県531コース対象) 2013年2月 関東平均相場 111万円 株価はリーマンショック前に戻したのに対し、会員権は上昇気配が強いとはいえ、関東平均全体との比較では、当時相場に対して▲36%という結果となりました。 より顕著な相場動向を把握するために、相場の高騰率が高いと実感する1都3県(東京・神奈川・埼玉・千葉)のコースに絞り、かつ相場50万円以上と相場50万円未満に分類、そして格付別分類して、2012年12月最安値と2013年2月相場の比較分析を追究しました。 B1都3県の現相場(2013年2月)と最安値相場(2012年12月)との比較 関東1都11県平均全体では見え難かったものが、1都3県別(対象172コース)や金額帯別の騰落率の側面から考察すると、ようやく数値の違いが浮き彫りになりました。昔であれば、景気がよければ会員権相場は軒並み上昇し、景気が悪くなれば全て下落するという呉越同舟的な図式が成り立ちました。 しかし、今は、より確実に2極化が顕著になってきていることが、今回の株高効果により明白になりました。 12月対比20%以上の上昇率を示したのは、神奈川県、埼玉、千葉の相場50万円以上のコースです。 都県別で見れば、1都3県とも上昇ですが、東京と千葉の50万円未満のコースの騰落率はマイナス数値を 示しています。 CAIG総研ゴルフ会員権格付評価別の騰落率の比較検証 会員権格付評価は予測通り、格付のグレードと上昇率の高さが正比例しています。 意外だったのは、AIG総研で推奨する格付A・Bと共に格付Cまでも相場上昇の結果が出たことです。 調査したところ、格付Cの中でも都心近郊かつコースレートの高い会員権にリーズナブル感が強まり需要が高まったことが要因でした。さすがに株高効果と云えども格付Dは相場下落という数値になりました。 ※ゴルフ会員権格付評価:ゴルフ場の経営母体や抵当権状況から預託金返還の危険性など10項目8段階の調査を行い、客観的数値から算出した5段階格付評価(詳細は弊社HP参照) D上昇率50%以上のコース(相場50万円以上対象) 最安値相場比較で、50%以上の高騰を示したコースは、1都5県で22コースです(19コースが1都3県)。 その中で上昇率70%を超えたコースは、11コースあります。 相模原、東京よみうり、武蔵、府中、藤ヶ谷は、上昇率以上に増減額の大きさが目を見張ります。 適正相場よりも下落し過ぎていたと思われる名門コースや経営母体が安心かつ首都圏近隣のコースに需要が集中した結果と云えます。 それでもリーマンショック前の相場には、まだまだ及ばない銘柄がほとんどの中、当時相場に肉薄している立川国際CCと武蔵CCは、稀少な優秀銘柄と云えるでしょう。 尚、上記以外の対象1都5県で上昇率50%超えたコースは下記11コースです。 【東京】 赤羽GC (54%) 55万⇒85万 【神奈川】 葉山国際CC (69%) 32万⇒55万 相模湖CC (56%) 172万⇒270万 【埼玉】 狭山GC (66%) 207万⇒345万 日高CC (59%) 185万⇒295万 大宮GC (53%) 182万⇒280万 【千葉】 平川CC (65%) 100万⇒165万 中山CC (50%) 192万⇒290万 【茨城】 龍ヶ崎CC (67%) 185万⇒310万 大洗GC (55%) 270万⇒420万 【栃木】 日光CC (50%) 90万⇒135万 【総論】 街角景気の先行き指数も過去最高を記録し、 長らく低迷し続けてきたゴルフ会員権相場にも明るい兆しが見え始めました。 しかし残念ながら、分析の通り、すべてのゴルフ場が相場好転してきている訳ではありません。 『 伏 す こ と 久 し き は、飛 ぶ こ と 必 ず 高 し 』 〜長い間うずくまって(力を蓄えて)いた鳥は、一旦飛び立てば必ず天高く上がる〜 中国古典の菜根譚にある一節ですが、ゴルフ業界は長い間うずくまっていました。 大きくジャンプするためにしゃがむことは必要な事でしょう。しかし逆境の時期に未来に向けて力を養い蓄えていたゴルフ場のみが、大きく飛び立てる可能性があると存じます。 メンバーを蔑ろにし、目先の売上に突っ走ってきたコースは、しゃがみこんだままの姿勢が続くことでしょう。 また会員権相場が徐々に回復してきているとはいえ、AIG総研では、これからの会員権価値は、もう今までの会員権価値では通用しないと考えています。 新しい“魅力”が付加されたゴルフ会員権を創造することが益々重要になってきています。 今、巷で流行っているお店でも旅館でも何でも、共通していることは、 「集める」ことよりも 「集まる」ことに力を注いでいるところです。 何度かこのレポートでも記述しましたが、 「来る人には楽しみを 帰る人には喜びを」の後半の“帰る人”こそが大事です。 「いかに来てもらうか」ではなく、 「いかに喜んで帰ってもらうか」を大切にしている場所です。 景気回復に弾みがついてきている2013年に、ひとつでも多くのゴルフ場が大きく飛び立つことを願います。 そして2015年問題に先駆け、今後は、ゴルフ場業界の活性化に新風を巻き起こす新サービスを創造し続けていくことが差別化の重要なポイントになると確信します。 (AIゴルフ総研事務局:川島利彦、柳肇、品川なつみ) |