ゴルフ会員権業界を取り巻く環境

20093月期】

 

2009年1月から3月は、昨年の米国金融危機に端を発した世界景気の減速の影響を受け、連日、日本企業の赤字決算が新聞紙上を賑わしました。

 

2009年に入り、ゴルフ場業界地図にも変化が生じています。オリックスグループのゴルフ場所有数が西武グループを抜いて、アコーディア(ゴールドマンサックス系)、PGM(ローンスター系)に次ぎ3位となり、国内企業勢ではトップに躍り出ました。

 

大手3グループの大きな共通点は、2点。

@民事再生法施行後、シェア拡大したこと。A会員権相場が低迷していること。

 

残念なのは、国内企業スポンサーとして期待されたにも拘わらず、オリックスグループのゴルフ場が、外資系ゴルフ場同様の軟調相場の評価であるという事実です。民間企業であれば、利益追求は当然ではありますが、メンバーを度外視した売上至上主義に走りすぎている感は否めません。

 

バブル時の頃、戸塚CCと横浜CCが引き合いに出されたことを思い出します。立地、開場時期、ホール数、メンバー数は、ほとんど同一にも拘わらず、横浜CCの相場は戸塚CCの半値でした。経営母体の信用度とメンバーの質の差が数字として表面化しました。

 

翻って今に目を移すと、旧日東興業グループの浜野GCと習志野CCです。

バブル時の習志野CCは浜野GCの半値の3,000万円、和議申請直前も浜野GCの半値の1,000万円でした。現在、浜野GCは会員主導の完全株主制ゴルフ場、習志野CCはアコーディアグループに生まれ変りました。会員権相場はというと、浜野GCの300万円に対して、習志野CCは40万円で、浜野GCの約8分の1まで価値を著しく下落させる結果を招いています。

運営姿勢、メンバーとビジターの格差が極めて少ないことが、会員権相場に響いているのは間違いないでしょう。大手3グループの会員権平均相場と全国の会員権平均相場の比較をすると、少しずつ相場への影響が浮き彫りにされてきます。(平成21319日現在) 

大手3グループの関東会員権平均相場と関東全体の会員権平均相場(大手3グループ除く)との比較は、更に歴然とした相場差を如実に物語ります。(平成21319日現在)

 

今や、特にゴルフ場業界で天下の悪法に成り下がった民事再生法(平成1112月公布、平成124月施行)。再生というより、借金の棒引きの手段と化しました。平成13年から平成20年にかけて、法的整理は525件ありますが、民事再生法は70%にあたる370件を占めています。日本のゴルフ場の90%以上が預託金制である会員の権利は、預託金請求権とプレー権です。法的整理コースにおいては、ほぼプレー権のみがメンバーの唯一の権利となりました。しかし現状は、メンバーにプレー権は与えられているものの、そのプレー権はビジターとあまり変わらない権利になっています。このことが全体相場の足を引っ張り、相場低迷に拍車をかけていると云わざるを得ません。

 

90数パーセントの預託金をカットした法的整理のゴルフ場で、会員制を冠しながらもビジター集客に力を注いでいる名ばかりのメンバーシップコースは、パブリックゴルフ場に業態変換して国民に広く開放した方が、余程ゴルフ業界の活性化に繋がります。

また、その方がゴルフ場業態のバランスが保たれ、本当の会員制ゴルフ場の価値を高めます。そして今迄以上にゴルファーの裾野が広がり、世界の舞台で活躍するプロゴルファーもより多く育つ土壌が出来上がる事でしょう。


 

今、改めて、“ゴルフ会員権相場”という言葉を考えてみると、字のごとく、会員の権利とメリットが歴然と存在してこそ、正常な市場価格が成立するものだと痛感します。

よって会員権相場というものは、会員の権利が明確に遵守されているコースの資産価値は高く、会員権利が軽んじられているコースの資産価値が低いのが、至極当然の市場なのです。

 

2008年の漢字一文字は「変」でした。政治の変・経済の変・生活の変・気候の変。2009年には、世の中も良い方向に新しく生まれ変わって欲しいという希望の変でもありました。

 

ゴルフ業界においても2008年は、会員権相場の変動・暴落の「変」ではありましたが、まだまだメンバー重視の経営を貫いているコース、インターネット予約サイトからビジターを受け入れないコースや預託金を規定通り返還しているコースも決して少なくありません。

現在は、不景気の煽りを受けてはいますが、間違いなく、近い将来、ビジター重視のコースとの格差が顕著に現われてくるはずです。

 

2009年のゴルフ場業界は、“会員”にとって「覚」「落」のゴルフ場の対極になっていくと強く感じます。メンバーシップの真の意味を自覚し、覚醒し、会員権価値が高まっていく、メンバーに喜ばれる「覚」のゴルフ場。そして益々、会員権価値が下落、喪失し続けていく、メンバーに落胆される「落」のゴルフ場。

 

現在、ゴルフ場業界には警鐘が鳴っています。今後、1コースでも多くの会員制ゴルフ場が、このままではいけないと目覚めて「覚」になることが、ゴルフ場業界と会員権相場の再生および活性化に繋がると弊社は確信しています。