ゴルフ会員権業界を取り巻く環境

20099月期】

 

リーマンショックから約1年。

1年前、国民は定額減税や補助金で内需を支えるという麻生新内閣の誕生に薄い期待をしていました。1年後、日本の政治は舵取りが大きく替わり、民主党の鳩山新内閣による「政権交代」という歴史的な歯車が動き始めました。

 

また世界経済は最悪期を脱しつつありますが、日本の株価の回復率は悪く、特に製造業では、設備と雇用という2つの過剰が重くのしかかり、日本国内の景気は不安定な状態です。

 

2016年五輪で正式競技に加わることが確実視されているゴルフ。石川遼選手が24歳で迎える五輪が東京開催となれば一大ブームが起こるかもしれません。

では、現在のゴルフ業界を取り巻く環境はどう変化してきているのでしょう。

 

【入場者状況】

8月のゴルフ場入場者数は、前年を大きく上回っています。全国6地区(北海道、東京、関西、中国、四国、九州)34都道府県774コースの延べ入場者は2785,539人となり、前年比114,898人、4.3%の増加です。特に外資系のアコーディアは8.7UP、PGM7.8UPと全国平均の2倍近い伸びを示しています。

しかし、日経新聞によるゴルフ場調査結果では、2009年度の見通しで7割のコースが減益または赤字運営になると回答しています。結局、外資系のコース運営の影響を受け、地元ゴルフ場がプレー料金の値下げ合戦に巻き込まれ苦戦を強いられている状況が続いています。

 

 【会員権相場状況】

20094月から8月にかけて、メンバー中心に運営しているコースの相場上昇は顕著に表れました。ゴルフ会員権相場は、確かに優良物件ほど1年前に比べ反発していますが、市場流通量は活発とは云えません。相場は堅調といえども、流通取引内容は膠着状態が続いています。

 

 【ゴルフ場の経営破綻状況】

8月には鉄道弘済会グループの藤代GC(茨城)、9月には甲斐芙蓉CC(山梨)や広島県と三原市が出資する第3セクターのフォレストヒルズゴルフ&リゾート(広島)が民事再生法を申請しました。

3コースに共通するのは、経営母体の安心感から入会した方が多い会員権であることです。残念ながら、天下の悪法と揶揄される民事再生法(平成1112月公布、平成124月施行)の最たるケースと云えるでしょう。

 

社会的信用ある企業グループのゴルフ場が、入会メンバーの信頼と期待を裏切ったことも問題ですが、更に重要視しなくてはならないのは、民事再生法を含め法的整理後の当該ゴルフ会員権相場とメンバーの行く末です。スポンサー再建による法的整理ゴルフ場の大半のコースには買いが入らず、相場低迷を辿っています。

 

何故、これ程までに相場値がつかないのでしょうか?

 

法的整理によって、会員に大きな痛みを負わせたにも拘わらず、メンバーよりもビジター集客に力を入れ過ぎているのが一番の原因であると云っても過言ではないでしょう。

多くの法的整理コースは、収益改善や利益確保のために年会費を上げ、集客営業に力を入れています。一番金銭的負担を強いたメンバーに報いる(会員権価値を高める)ための努力を怠り、結果、資産価値を悪化させる事態を引き起こしているのです。

 

甲斐芙蓉CCは、損保ジャパンや芙蓉グループの数社が出資し設立されたゴルフ場です。藤代GCは、財団法人鉄道弘済会グループの経営ゴルフ場であり、しかも毎年4,000万円以上の経常利益を出しつつも、預託金問題から安易に目を反らしました。藤代GCのスポンサーはアコーディア、甲斐芙蓉CCのスポンサーは国際興業の予定です。今後、スポンサー企業のメンバーに対する経営姿勢が、更に拍車をかけて、相場に反映されていくことでしょう。

 


 

最近、名義書換料の半額セールを開始するケースが増え始めました。しかし相場上昇のカンフル剤にはならず、残念ながらその効果は市場に表れていません。通常、名義書換料を半額にすれば、活気づきます。書換料を下げても買いの気配が弱いのは、メンバーになる価値は無いとゴルファーが判断しているに他なりません。この相場低迷の理由は、景気とは全く関係ありません。

 

ここで、法的整理ゴルフ場中心の外資系2社(アコーディアとPGM)と名門コースと云われる株主制ゴルフ場との比較をご報告申し上げます。

(※対象ゴルフ場:東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、茨城県、栃木県、群馬県、山梨県)

 

    *株主制ゴルフ場・・・31コース対象

    *アコーディア ・・・34コース対象

    *PGM    ・・・31コース対象

 

20098月の相場平均と20091月からの相場騰落率の比較】

*株主制ゴルフ場

    8月度平均相場  869万円(アコーディア&PGM平均の28倍の相場形成)

    1月からの騰落率 119.48

*アコーディア&PGM

    8月度平均相場   30万円(アコーディア25万円、PGM35万円)

    1月からの騰落率  93.9

 

【メンバーフィとビジターフィの比較】

*株主制ゴルフ場

メンバーフィ平均 8,674円(アコーディア&PGM平均の2%高)

ビジターフィ平均29,760(メンバー差額21,086円)

     ※ビジターフィ25,000円以上・・・25コース(80%)

ビジターフィ30,000円以上・・・15コース(48%)

 

*アコーディア&PGM

メンバーフィ平均 8,488

ビジターフィ平均21,236(メンバー差額12,748円)

     ※ビジターフィ25,000円以上・・・14コース(20%)

ビジターフィ30,000円以上・・・ 4コース(6%)

 

【ネット予約状況の比較】

ネット予約サイト大手5社(ゴルフダイジェストオンライン、イーゴルフ、パー72、楽天GORA、アルバ)からビジターで土日祝日にプレー予約可能なゴルフ場の比較。

 

*株主制ゴルフ場のネット予約サイト会社との契約数の平均は1コース0.65です。ちなみに株主制ゴルフ場で、ネット予約可能なコースは、東京五日市CC(東京)、京葉CC(千葉)中山CC(千葉)、小田原湯本CC(神奈川)、伊香保CC(群馬)、宇都宮CC(栃木)の6コースのみで、他25コースは一切ネット予約が不可であり、メンバー重視の経営をしております。

 

*アコーディアとPGMの平均は1コース4.2(アコーディア4社・PGM4.5社)。

ネット予約不可なのは、成田GC(千葉)の1コースのみで、他64コース(98%)は全て、会員制ゴルフ場にもかかわらず、メンバーでなくてもプレーが可能なコースです。

 

ネット予約状況1つを取っても、株主制コースと外資系コースのメンバーに対する配慮は大きく異なります。また風格、来場者の質、コース管理、食事を比べてみても、歴史のある名門コースと言われるゴルフ場と他のコースとの差は歴然としています。

ゴルフ会員権市場における相場数値は、全てを物語っていると断言できるのではないでしょうか。