ゴルフ会員権業界を取り巻く環境

〜 会員権価格と名義書換料の比率の検証 〜

201112月期】

 

 

2011年の日本の世相を表す漢字1文字は、「絆と発表されました。

東日本大震災によって氣づいた絆、生まれた絆、繋がった絆、そして、なでしこジャパンから教えて頂いた勇氣と希望の絆。忘れかけていた大切なものを教えて頂いた1年だったといえるでしょう

 

翻ってゴルフ場業界はどうだったでしょうか。

「絆」という一文字は、残念ながら当てはまらない年であったと云えます。そして、AIゴルフ総研が選んだ2011年のゴルフ場業界の漢字1文字は、「変」です。

 

東日本大震災の影響もあり、ゴルフ場業界は様変わりしました。

原発事故の直接影響や風評被害により、東日本の多くのゴルフ場の入場者と売上が激減、激変しました。

数年前と比較しても、会員制コースでありながら大衆化へと変遷したコースが増加しました。

今年は、ゴルフ場の2大大手グループである、アコーディアグループが、ゴールドマンサックス系外資でなくなった変化とPGMグループが、ローンスター系外資から国内パチンコメーカーの平和(東証1部上場)の傘下になった変化もありました。

 

これまでは、ゴルフ場業界は、外的要因によって大きな変化を余儀なくされましたが、これからは、人口高齢化の2015年問題を考慮しても、ゴルフ場は、自発的に内的要因によって大きく変わらなくてはならない過渡期にあります。

 

何事においても、時代の変化とともに、変わらなくてはならない部分と時代が変化しても変えてはいけない部分があります。今回のテーマは、変えてはならないサービスではなく、変えるべき部分の一つに焦点をあてました。

 

バブル期には、会員権の入会時に発生する名義書換料は、会員権価格の1割相当が妥当と云われていました。

しかし大幅下落した現在の相場低迷の原因の一つに、名義書換料の負担の大きさが足枷になっているという問題があります。

 

多くのゴルフ場にとって、メンバーの高齢化に伴い、メンバーの若返り策やアクティブメンバーの掘り起し策が喫緊の問題となってきています。

 

よって201112月のレポートテーマは、

ゴルフ場業界の変わらなくてはならない「変」の一つである、

「名義書換料金と相場の比率についての検証」をさせて頂きました。

 


 

【名義書換料金と相場の比率の検証

 

今回は、市場流通している14県(東京・神奈川・埼玉・千葉・茨城)257コースを対象にしました。

会員権価格は、平成23年12月9日現在の相場をもとに算出しております。

比率の算出は、名義書換料÷会員権価格(相場)×100です。

(全257コースの比率一覧は、別紙添付致しますのでご参照ください)

 

1都4257コースの名義書換料の平均  ・・・ 84万円

14257コースの会員権価格の平均  ・・・162万円

14257コースの名義書換料比率の平均・・・52% (※名義書換料÷会員権価格)

 

当節、当該ゴルフ場に入会する入会金や名義書換料として、会員権価格の12割相当が、

適正とされていたものが、今や会員権価格の5割を占めています。

バブル時の関東平均相場に対して、現在の関東平均相場は40分の1にまで下落しているにもかかわらず、

名義書換料とのバランスに大きなギャップが生じています。

 

今回は14県に絞った報告ですが、県平均相場の低い地域まで範囲を広げれば、名義書換料比率は、

グンと高くなるという事を申し付け加えさせて頂きます。

 

入会金名目の名義書換料とは、会員権の購入者にとっては、不動産のところで云う礼金にあたり、

云い方を悪く言えば、捨て金に相当するのです。

では、詳細を見ていきましょう。

 

14県ごとの名義書換料率≫

(単位:万円)

会員権価格平均

名義書換料平均

名義書換料比率

東京都

757

249

32%

神奈川県

248

104

42%

埼玉県

117

83

71%

千葉県

128

76

59%

茨城県

79

53

67%

 

首都圏近郊でありながら、埼玉県の名義書換料比率の高さが目立ちます。

名義書換料は、ゴルフ場の大切な収入源と云えども、新入会者があっての収入である以上、

設定価格は重要です。会員権価格の3割以内に修正する必要があると推察いたします。

結果的に、入会回転率を上げ、今まで以上の名義書換料収入に繋がります。

 


 

14県の名義書換料率の分布≫

 

 

残念なことに14257コースのうちの6割以上のコースが、会員権価格以上の名義書換料を設定されています(名義書換料比率100%以上)。

名義書換料比率が30%未満のコースは、1割も満たしません。

 

 

≪名義書換料率が30%未満の格付評価分布≫

 

 

名義書換料比率が30%未満に抑えられているコースの約6割が、格付評価Aランクの会員権となりました。

 


 

≪ ベスト10 / 名義書換料比率の低い会員権≫

 

BEST 10

コース名

都道府県

名義書換料

会員権価格相場

名義書換料率

格付評価

東都飯能CC

埼玉県

525,000

12,750,000

4%

A

東都埼玉CC

埼玉県

262,500

3,750,000

7%

A

カメリアヒルズCC

千葉県

1,500,000

20,250,000

7%

B

潮来CC

茨城県

1,050,000

9,000,000

12%

B

よみうりGC

東京都

3,150,000

25,500,000

12%

A

東都秩父CC

埼玉県

157,500

1,275,000

12%

B

磯子CC

神奈川県

1,575,000

10,475,000

15%

A

エンゼルCC

千葉県

262,500

1,575,000

17%

B

レイクウッドGC

神奈川県

2,100,000

12,250,000

17%

A

鷹之台CC

千葉県

3,150,000

18,350,000

17%

A

(単位:円)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪ ワースト10 / 名義書換料比率の高い会員権≫

 

WORST 10

コース名

都道府県

名義書換料

会員権価格相場

名義書換料率

格付評価

本千葉CC

千葉県

630,000

5,000

12600%

D

千葉国際CC

千葉県

262,500

3,200

8203%

D

富士C笠間倶楽部

茨城県

630,000

15,000

4200%

D

アジア取手CC

茨城県

300,000

15,000

2000%

D

嵐山CC

埼玉県

2,100,000

108,000

1944%

B

静ヒルズCC

茨城県

525,000

30,000

1750%

D

セントラルGC

茨城県

525,000

30,000

1750%

C

越生GC

埼玉県

1,050,000

75,000

1400%

D

霞ヶ浦CC

茨城県

1,050,000

75,000

1400%

D

大厚木CC

神奈川県

630,000

55,000

1145%

C

(単位:円)

 

今回の検証で言えることは、まず、名義書換料率が100%を超えるコースは、早急に名義書換料の減額を検討し、流通性を高め、2015年問題を含め、メンバーの世代交代策を取るべきでしょう。


 

また、名義書換料を減額する予定の全くないコースは、少なくとも本氣で会員権価値を高め、会員権価格を上げる施策に取り組むことが急務です。それがメンバーから名義書換料や年会費を徴収している経営会社の責務です。

会員権相場は、会員権業者が操作していて当てにならない数字だとおっしゃるゴルフ場もございますが、そんなことはありません。自由市場における数字は正直です。もう一度、自社のゴルフ場の会員権価格を真摯に見つめ直して、原因を追究しない限り、決して良い結果は生まれないと云っても過言ではありません。

 

また民事再生法というゴルフ場経営者にとって救いの神のような法律が施行されてしまってから、安易にこの法律に便乗したコースが多発して、結果、ゴルフ場の信用が失墜しました。

今までの民事再生法を申請したゴルフ場で、法的手段を取る前に、本当に脳みそが汗をかくくらい知恵を絞りだして努力をしたコースがどれ程あるでしょうか。全くないとは言い切れませんが、ほとんど無いに等しいでしょう。

 

今後は、名義書換料収入という目先の近視眼的な戦略でなく、ゴルフ場の未来のための俯瞰的な戦略が絶対に

必要な時代です。

 

 

 

【 総 論 】

 

AIゴルフ総研で選んだ漢字一文字の「変」で思い出されるのが、進化論の提唱者チャールズ・ダーウィン博士の言葉です。

 

最も強い者が生き残るのではない。

最も賢い者が生き残るのでもない。

唯一生き残るのは、変化できる者である。

 

現在は、高度成長期の時代ではなく、終身雇用の時代でもなく、家柄社会でもなく、学歴社会でもなく、接待ゴルフの時代でもありません。

過去に経験していない時代を生き残るには、時代と環境の変化に対応して、過去の成功や常識を捨て去り、変化することに躊躇しないで、変化すると決断して実践することが大切になってきていると思われます。

 

ゴルフ場は「ぶる」から「らしく」へ、過去の名声に浸ったゴルフ場ぶるのではなく、メンバーを大切にしながら、各ゴルフ場の特徴を出したゴルフ場らしさを打ち出すことです。

 


 

ゴルフ場は元来、カントリークラブと云う(えん)を創るために、

(えん)あるメンバーを募りました。

そしてその後は、預託金据置期間を延長する(えん)ではなく、

法的整理で会員から恨まれる(えん)を目指していたわけでも決してないでしょう。

縁あるメンバーに感謝して喜ばれ、メンバーが応援する(えん)となり、

三方よしで、皆が幸せになるクラブライフという(えん)を楽しむ空間とサービスを提供する場となり、

結果、それが丸い(えん)となり、お金を生み出す(えん)にも繋がることを目指していたのではないでしょうか。

 

もう一度、足元と根っこを見直す時が訪れており、本質やホンモノが問われる時代になったとゴルフ場は

再認識して頂きたいと強く感じます。

 

 

最後の最後に坂村真民さんの詩をお届けさせて頂きます。

 

 

すべて

とどまると

くさる

このおそろしさを

知ろう

つねに前進

つねに一歩

 

 

それでは、皆様、素敵な新年をお迎え下さい。

本年も格別のご厚情を賜りまして誠にありがとうございます。

皆様の健体康心を心からお祈り申し上げます。

 

 

AIゴルフ総研事務局:川島利彦、柳肇、品川なつみ)